鉄のお道具屋

田中一村

オルセー美術館展で、ルソーの『蛇使いの女』を見ていたとき、隣にいた美大生らしき
二人の会話が耳に飛び込んできた。『これ、あの人の絵に似てるよね、奄美大島のさ~』『あ、分かる分かる、田中いっそーね』た、たなかいっそー?? 誰ですかそれ??
早速家に帰って調べたら、田中一村の熱帯植物の絵がアップされた。初の大規模な
回顧展が8月から千葉市美術館で開催されるという。
情報って、タイミングがまずいと何の役にも立たない。見たかったものが、実は昨日
終わってた、なんてことを知ってしまった日の落胆ときたら・・・・・むしろ知りたく
なかった、と思う。今回はホントにチャンスに恵まれた。あの女子大生に心から謝々。
一村は、長く千葉駅周辺に住んでいたが50歳で単身奄美大島に移住、染色工などを
しながら奄美の風景を描き続け、島でひっそり亡くなった。幼い頃は神童と呼ばれ、
若い頃何度か作品が入賞するも、自信作が認められなかったことで(?)見切りをつけ
たのでしょうか。 没後、メディアで作品が紹介されると、一村の絵は空前のブームに
なったそうです。残念。もっと早く知りたかった。
代表作の2点、『アダンの海辺』『不喰芋と蘇鉄』が一番最後に並んで展示されていた
胸に迫り来るものがあった。晩年の一村が、どれだけ下準備をして、どんな気持ちで
描いたんだろう、と想像をめぐらせた。病身の命を削って描いたに違いない。
田中一村記念美術館というのが鹿児島にあるらしい。いつか行かなくては。

Post a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です